不動産投資を考える上で非常に「重要」「理解しづらい」のが建物の減価償却

建物の構造、築年数に基づき毎年経費計上されていきますが、今回は詳細を

説明させて頂きます。

(写真=123RF)

減価償却とは

減価償却は建物価額を決められた耐用年数で各期に按分をして経費にしていく事を意味します。

耐用年数は建物の構造により決められており、新築物件(木造)の場合

22年間と定められています。

中古物件(木造) の場合、

購入時の新築からの経過年数×0.2+(22年-経過年数) ※1未満切り捨て

となります。

例えば中古の木造物件の場合で20年を経過している物件は

20年×0.2+(22年-20年)で耐用年数は6年となり建物価額を6年間にわたり

減価償却を行う事になります。

中古の木造物件で22年を経過している物件は建物価額を4年で減価償却を行う事になります。

不動産投資を始める不動産投資家の方の殆どが税金に直結する減価償却費を考えていないのが実情です。

減価償却費から不動産投資を考える

ここで一つの例を考えていきましょう。

築年数25年、木造、購入価額1億円、建物2,000万円、土地8,000万円

家賃収入年額1,000万円(表面利回10%) 経費200万円(減価償却、利息除く)ネット収入800万円

元利金1億円 借入期間25年 利息年3.0%

税金はサラリーマン投資家を想定して税率25%で計算

上記を条件に5年間の減価償却の効果を考えてみましょう。

購入後1年目の計算購入後2年目の計算
ネット収入800万円800万円
減価償却費500万円(2,000万円÷4年)500万円
支払利息300万円(年額で考える)288万円
課税所得0万円12万円
税金(所得税)0円3万円(25%)
キャッシュ残高500万円(ネット収入-支払利息)509万円(ネット収入-支払利息)
元金返済400万円(元金均等)400万円(元金均等)
手残100万円109万円
購入後3年目の計算購入後4年目の計算
ネット収入800万円800万円
減価償却費500万円(2,000万円÷4年)500万円
支払利息276万円(年額で考える)264万円
課税所得24万円36万円
税金(所得税)6万円(25%)9万円(25%)
キャッシュ残高518万円(ネット収入-支払利息)527万円(ネット収入-支払利息)
元金返済400万円(元金均等)400万円(元金均等)
手残118万円127万円
購入後5年目の計算(減価償却後)
ネット収入800万円
減価償却費0万円
支払利息252万円(年額で考える)
課税所得548万円
税金(所得税)137万円(25%)
キャッシュ残高411万円(ネット収入-支払利息)
元金返済400万円(元金均等)
手残11万円

上記をご覧頂いてわかるように減価償却費の計上がされなくなった5年経過後に大幅に所得税が増加し手残りはわずか11万円になってしまいます。

今回の例はネット収入(賃料収入-費用)が変化しない計算ですが、

築25年の木造アパートが5年間で家賃収入(賃料額の一定)、稼働率

物件にかかる修繕費などの経費は一定ではなく、時間の経過と共に悪化していく

事は容易に想像できると思います。

次に減価償却後の5年経過後に売却を想定してみましょう。

5年経過段階での各種項目
建物簿価0円
土地簿価8,000万円
元金残高8,000万円
累積手許資金465万円

8,000万円で売却できればとんとんの様に思いますが、売却には費用がかかります。

売却時に一番大きな出費は仲介手数料です。

(8,000万円×3%+6万円)×1.10=約270万円

司法書士報酬、登録免許税、印紙で5万円 合計275万円

465万円-275万円=190万円

つまり8,190万円で売却をすればとんとんの様に思えますが、

実際には借入を行って不動産を購入しているので、借入金の残額も考えながら

売却をする事になります。

耐用年数を経過した物件を購入する際はこうしたキャッシュフローの流れや

出口などを考える必要があります。

おわりに

よくある営業トークで物件購入時に

「積算評価が高いので最後は土地で売却すればリスクは低いです・・・」

などの営業トークで耐用年数が経過した物件を購入させようとしますが、

キャッシュフローなどを考えるとそう簡単な運用ではないと理解できると思います。

土地で売却するにしても、各テナントの立退費用、立退期間中の空室分の

収入の減少がある中でその期間中の元利金の返済は行う必要があります。

不動産投資は転売目的でない限りあくまでも保有期間中の減価償却を考えながら

キャッシュフローを意識して運用する事が重要です。

まとめ

  • 耐用年数が経過した物件の毎期安定した収入を維持する事は容易でない
  • 建物の減価償却費が計上できなくなった後は課税所得が上がり税金が大幅に増える
  • 建物、土地の帳簿価格と借入金は同額ではない

今回は減価償却と耐用年数から不動産投資のリスクを考えてみました。

「更新:2021年2月2日」

著者:日本AMサービス 代表 堂下 葉

減価償却費と耐用年数https://reibee.japan-am-service.com/wp-content/uploads/2017/02/10567385_ml-1024x680.jpghttps://reibee.japan-am-service.com/wp-content/uploads/2017/02/10567385_ml-150x150.jpgreibee-japan-am-service不動産税務耐用年数不動産投資を考える上で非常に「重要」で「理解しづらい」のが建物の減価償却 建物の構造、築年数に基づき毎年経費計上されていきますが、今回は詳細を 説明させて頂きます。 (写真=123RF) 減価償却とは 減価償却は建物価額を決められた耐用年数で各期に按分をして経費にしていく事を意味します。 耐用年数は建物の構造により決められており、新築物件(木造)の場合 22年間と定められています。 中古物件(木造) の場合、 購入時の新築からの経過年数×0.2+(22年-経過年数) ※1未満切り捨て となります。 例えば中古の木造物件の場合で20年を経過している物件は 20年×0.2+(22年-20年)で耐用年数は6年となり建物価額を6年間にわたり 減価償却を行う事になります。 中古の木造物件で22年を経過している物件は建物価額を4年で減価償却を行う事になります。 不動産投資を始める不動産投資家の方の殆どが税金に直結する減価償却費を考えていないのが実情です。 減価償却費から不動産投資を考える ここで一つの例を考えていきましょう。 築年数25年、木造、購入価額1億円、建物2,000万円、土地8,000万円 家賃収入年額1,000万円(表面利回10%) 経費200万円(減価償却、利息除く)ネット収入800万円 元利金1億円 借入期間25年 利息年3.0% 税金はサラリーマン投資家を想定して税率25%で計算 上記を条件に5年間の減価償却の効果を考えてみましょう。 購入後1年目の計算 購入後2年目の計算 ネット収入 800万円 800万円 減価償却費 500万円(2,000万円÷4年) 500万円 支払利息 300万円(年額で考える) 288万円 課税所得 0万円 12万円 税金(所得税) 0円 3万円(25%) キャッシュ残高 500万円(ネット収入-支払利息) 509万円(ネット収入-支払利息) 元金返済 400万円(元金均等) 400万円(元金均等) 手残 100万円 109万円 購入後3年目の計算 購入後4年目の計算 ネット収入 800万円 800万円 減価償却費 500万円(2,000万円÷4年) 500万円 支払利息 276万円(年額で考える) 264万円 課税所得 24万円 36万円 税金(所得税) 6万円(25%) 9万円(25%) キャッシュ残高 518万円(ネット収入-支払利息) 527万円(ネット収入-支払利息) 元金返済 400万円(元金均等) 400万円(元金均等) 手残 118万円 127万円 購入後5年目の計算(減価償却後) ネット収入 800万円 減価償却費 0万円 支払利息 252万円(年額で考える) 課税所得 548万円 税金(所得税) 137万円(25%) キャッシュ残高 411万円(ネット収入-支払利息) 元金返済 400万円(元金均等) 手残 11万円 上記をご覧頂いてわかるように減価償却費の計上がされなくなった5年経過後に大幅に所得税が増加し手残りはわずか11万円になってしまいます。 今回の例はネット収入(賃料収入-費用)が変化しない計算ですが、 築25年の木造アパートが5年間で家賃収入(賃料額の一定)、稼働率 物件にかかる修繕費などの経費は一定ではなく、時間の経過と共に悪化していく 事は容易に想像できると思います。 次に減価償却後の5年経過後に売却を想定してみましょう。 5年経過段階での各種項目 建物簿価 0円 土地簿価 8,000万円 元金残高 8,000万円 累積手許資金 465万円 8,000万円で売却できればとんとんの様に思いますが、売却には費用がかかります。 売却時に一番大きな出費は仲介手数料です。 (8,000万円×3%+6万円)×1.10=約270万円 司法書士報酬、登録免許税、印紙で5万円 合計275万円 465万円-275万円=190万円 つまり8,190万円で売却をすればとんとんの様に思えますが、 実際には借入を行って不動産を購入しているので、借入金の残額も考えながら 売却をする事になります。 耐用年数を経過した物件を購入する際はこうしたキャッシュフローの流れや 出口などを考える必要があります。 おわりに よくある営業トークで物件購入時に 「積算評価が高いので最後は土地で売却すればリスクは低いです・・・」 などの営業トークで耐用年数が経過した物件を購入させようとしますが、 キャッシュフローなどを考えるとそう簡単な運用ではないと理解できると思います。 土地で売却するにしても、各テナントの立退費用、立退期間中の空室分の 収入の減少がある中でその期間中の元利金の返済は行う必要があります。 不動産投資は転売目的でない限りあくまでも保有期間中の減価償却を考えながら キャッシュフローを意識して運用する事が重要です。 まとめ 耐用年数が経過した物件の毎期安定した収入を維持する事は容易でない 建物の減価償却費が計上できなくなった後は課税所得が上がり税金が大幅に増える 建物、土地の帳簿価格と借入金は同額ではない 今回は減価償却と耐用年数から不動産投資のリスクを考えてみました。 「更新:2021年2月2日」 著者:日本AMサービス 代表 堂下 葉不動産投資成功のノウハウを解説します
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