家賃滞納のリスクは賃貸経営の最大の敵
賃貸経営において管理の重要な要素となる家賃管理ですが、
オーナーの状況などを何も考えずに毎月遅れてしまう方が必ずいらっしゃいます。
1か月程度の遅れであれば、回収はそう難しくないと思いますが、
2~3か月の賃料が滞納してしまうと、次の移転費用もなく入居者の方も身動きが取れなくなり
長期的な未収につながる事が非常に多くなります。
(写真=123RF)
一般的には賃料は毎月決められた日に振込などで支払いますが、中には支払いに遅れてしまう人もいます。
こうした入金の遅れの問題は賃貸経営において様々な問題に波及する事になります。
例えば借入を行っているのであれば、元利金の返済に影響が出たり、工事代金等の支払いに影響がでたり、
予定していた計画での資金繰りができなかったり、長期的な滞納で家賃収入がないお部屋の追い出しをかける際に
弁護士費用など多額の費用がかかる事になります。
こうした中でも滞納者だからと言って強硬な手段を取る事ができず、本当に頭を悩ませる問題です。
そこで今回は、家賃滞納に関するリスクと注意点、対処方法を紹介をさせて頂きます。
1.こんなにたくさんある家賃滞納リスク
(1)資金繰りが詰まり、ローンが返済できない
なんといっても大きな問題となるのが家賃滞納による収入がない中でも固都税の支払やローンの返済等が発生してしまうと言う事です。
見込んでいた収入の未入金が続くと、手元資金を持ち出すことになり、余裕がない資金繰りの物件ですと毎月その状況が続き、
手許の資金を減少させる事になり資金がショートする危険があります。
(2)新規入居者を募集できない
滞納者が自主的に退去しない限り、家賃滞納が発生してから強制的に明渡を実現するまでには少なくとも6カ月近くかかります。
管理の問題などを話をされ話がこじれてしまうと1年以上争うというケースもあります。
その間、家賃収入がないばかりか、新規の入居者を募集するすらもできないため、滞納が発生しているお部屋は空室よりも
悪い影響がでてしまい賃貸経営に大きな悪影響を及ぼすことになります。
(3)滞納家賃にも税金が発生
この部分は多くの方が見落としがちな部分なのですが、家賃滞納があったとしても税務上収入があるため、
家賃を受領していなくても、その分の法人税や所得税は課税され支払義務が発生します。
もし課税をされたくない場合は家賃回収できないことを疎明する資料を用意しなければなりません。
そのためここでも税理士などの専門家などに相談を行う必要も出てくるので余分な出費につながります。
他のお部屋等で資金がカバーできていれば良いですが、滞納が発生したまま決算期を迎えると、
入金の見込みがなくても税金を支払う事態に陥ってしまいます。
(4)契約書に書いてあっても違法
家賃滞納が発生した際に賃貸借契約書内にで
「勝手に部屋の中の物を処分できる」「玄関ドアのカギを交換できる」など
契約書に書いてあることも、賃借人に不利なことであれば、消費者契約法により否定されてしまいます。
そのため契約書で対策をたてるのは限度があるのです。さらに、国会では賃借人優位の法制度を過去何度も検討されており、
日本における法制度は賃借人が優位な状況が今後も続いていくと想像できます。
2.家賃滞納時に絶対にしてはいけない対応
法的意識がない管理会社や大家さんなどが行いがちなのですが、
裁判手続きを経ずに自らの実力で、退去させたりする事はできません。(自力救済の禁止)
違反すると、民事上の損害賠償請求だけでなく、刑事告訴される危険もありますので、ご注意が必要です。
一般的な督促と考えて行動していたとしても、相手が恐怖を感じると問題になるおそれもありますので、慎重に対応しましょう。
以下に、過去に裁判で責任を追及された事例を紹介します。
(1)「明渡し」で問題となった対応
対 応 | 刑事責任 | 民事責任 |
鍵交換 | 不動産侵奪罪(刑法235条の2) | 不法行為責任に基づく損害賠償 |
物件への立入 | 住居侵入罪(刑法130条) | |
承諾なく荷物の搬出・処分 | 窃盗罪(刑法235条)・器物損害罪(刑法261条) |
- 管理会が行った場合も民事責任を問われる危険あり(民法715条、719条)
- 契約書に特約あっても原則として自力救済不可(裁判例)賃貸借終了後に賃借人から個別の同意ある場合に限り可能な余地あり。
(2)「取立て」で問題となった対応
対 応 | 刑事責任 | 民事責任 |
執拗な督促(早朝深夜の督促) | 脅迫罪(刑法222条)・恐喝罪(刑法249条) | 不法行為責任に基づく損害賠償 |
督促貼り紙 | 脅迫罪(刑法222条) |
- 管理会が行った場合も民事責任を問われる危険あり(民法715条,719条)
3.明渡の対処方法
家賃滞納者に対しては以下のとおり対応する必要があります。
⑴ 話し合いで合意書を取り付ける
滞納者と話し合って、合意解除する方法です。相手を威圧しないよう慎重に対応する必要があります。
明渡しも合意する場合、合意者には、残置物の所有権を放棄する旨等、
後々困ることがないように条件を盛り込んでおく必要があります。
⑵ 法的手続を進める
法律や判例に定める手順に従い、手続きする方法です。まずは督促を行い、契約解除できる条件が整い次第、契約を解除します。
そして、契約解除後、明渡訴訟を起こし、勝訴判決をとります。
最後に、勝訴判決をもって、強制執行の手続きにおいて執行官主導の元、退去を実行することになります。
途中、賃借人の任意で支払・退去した場合には手続き終了になります。
まとめ
賃貸経営における根幹となる家賃収入が入らないと言う問題はオーナーにとって非常に大きな問題ですが、
しかしながら自力救済の禁止などが定められている以上、あくまでも法的根拠に則る形で対処が必要となります。
家賃滞納は金額が大きくなればなるほど、機会損失が大きくなるので、そうならないためにも
予め専門家などに相談をする事も家賃滞納を防ぎ賃貸経営を成功させる一つだと思います。
著者:
司法書士法人中央グループ・行政書士法人中央グループ・社会保険労務士法人中央グループ
税理士中央グループ
代表 原田康伸
HP:http://www.h-firm.com/index.html
https://reibee.japan-am-service.com/%e5%ae%b6%e8%b3%83%e6%bb%9e%e7%b4%8d%e3%81%ae%e3%83%aa%e3%82%b9%e3%82%af%e3%81%a8%e3%81%af/家賃滞納のリスクとはhttps://reibee.japan-am-service.com/wp-content/uploads/2017/04/60432047_m.jpghttps://reibee.japan-am-service.com/wp-content/uploads/2017/04/60432047_m-150x150.jpg賃貸経営賃貸経営において管理の重要な要素となる家賃管理ですが、 オーナーの状況などを何も考えずに毎月遅れてしまう方が必ずいらっしゃいます。 1か月程度の遅れであれば、回収はそう難しくないと思いますが、 2~3か月の賃料が滞納してしまうと、次の移転費用もなく入居者の方も身動きが取れなくなり 長期的な未収につながる事が非常に多くなります。 (写真=123RF) 一般的には賃料は毎月決められた日に振込などで支払いますが、中には支払いに遅れてしまう人もいます。 こうした入金の遅れの問題は賃貸経営において様々な問題に波及する事になります。 例えば借入を行っているのであれば、元利金の返済に影響が出たり、工事代金等の支払いに影響がでたり、 予定していた計画での資金繰りができなかったり、長期的な滞納で家賃収入がないお部屋の追い出しをかける際に 弁護士費用など多額の費用がかかる事になります。 こうした中でも滞納者だからと言って強硬な手段を取る事ができず、本当に頭を悩ませる問題です。 そこで今回は、家賃滞納に関するリスクと注意点、対処方法を紹介をさせて頂きます。 1.こんなにたくさんある家賃滞納リスク (1)資金繰りが詰まり、ローンが返済できない なんといっても大きな問題となるのが家賃滞納による収入がない中でも固都税の支払やローンの返済等が発生してしまうと言う事です。 見込んでいた収入の未入金が続くと、手元資金を持ち出すことになり、余裕がない資金繰りの物件ですと毎月その状況が続き、 手許の資金を減少させる事になり資金がショートする危険があります。 (2)新規入居者を募集できない 滞納者が自主的に退去しない限り、家賃滞納が発生してから強制的に明渡を実現するまでには少なくとも6カ月近くかかります。 管理の問題などを話をされ話がこじれてしまうと1年以上争うというケースもあります。 その間、家賃収入がないばかりか、新規の入居者を募集するすらもできないため、滞納が発生しているお部屋は空室よりも 悪い影響がでてしまい賃貸経営に大きな悪影響を及ぼすことになります。 (3)滞納家賃にも税金が発生 この部分は多くの方が見落としがちな部分なのですが、家賃滞納があったとしても税務上収入があるため、 家賃を受領していなくても、その分の法人税や所得税は課税され支払義務が発生します。 もし課税をされたくない場合は家賃回収できないことを疎明する資料を用意しなければなりません。 そのためここでも税理士などの専門家などに相談を行う必要も出てくるので余分な出費につながります。 他のお部屋等で資金がカバーできていれば良いですが、滞納が発生したまま決算期を迎えると、 入金の見込みがなくても税金を支払う事態に陥ってしまいます。 (4)契約書に書いてあっても違法 家賃滞納が発生した際に賃貸借契約書内にで 「勝手に部屋の中の物を処分できる」「玄関ドアのカギを交換できる」など 契約書に書いてあることも、賃借人に不利なことであれば、消費者契約法により否定されてしまいます。 そのため契約書で対策をたてるのは限度があるのです。さらに、国会では賃借人優位の法制度を過去何度も検討されており、 日本における法制度は賃借人が優位な状況が今後も続いていくと想像できます。 2.家賃滞納時に絶対にしてはいけない対応 法的意識がない管理会社や大家さんなどが行いがちなのですが、 裁判手続きを経ずに自らの実力で、退去させたりする事はできません。(自力救済の禁止) 違反すると、民事上の損害賠償請求だけでなく、刑事告訴される危険もありますので、ご注意が必要です。 一般的な督促と考えて行動していたとしても、相手が恐怖を感じると問題になるおそれもありますので、慎重に対応しましょう。 以下に、過去に裁判で責任を追及された事例を紹介します。 (1)「明渡し」で問題となった対応 対 応 刑事責任 民事責任 鍵交換 不動産侵奪罪(刑法235条の2) 不法行為責任に基づく損害賠償 物件への立入 住居侵入罪(刑法130条) 承諾なく荷物の搬出・処分 窃盗罪(刑法235条)・器物損害罪(刑法261条) 管理会が行った場合も民事責任を問われる危険あり(民法715条、719条) 契約書に特約あっても原則として自力救済不可(裁判例)賃貸借終了後に賃借人から個別の同意ある場合に限り可能な余地あり。 (2)「取立て」で問題となった対応 対 応 刑事責任 民事責任 執拗な督促(早朝深夜の督促) 脅迫罪(刑法222条)・恐喝罪(刑法249条) 不法行為責任に基づく損害賠償 督促貼り紙 脅迫罪(刑法222条) 管理会が行った場合も民事責任を問われる危険あり(民法715条,719条) 3.明渡の対処方法 家賃滞納者に対しては以下のとおり対応する必要があります。 ⑴ 話し合いで合意書を取り付ける 滞納者と話し合って、合意解除する方法です。相手を威圧しないよう慎重に対応する必要があります。 明渡しも合意する場合、合意者には、残置物の所有権を放棄する旨等、 後々困ることがないように条件を盛り込んでおく必要があります。 ⑵ 法的手続を進める 法律や判例に定める手順に従い、手続きする方法です。まずは督促を行い、契約解除できる条件が整い次第、契約を解除します。 そして、契約解除後、明渡訴訟を起こし、勝訴判決をとります。 最後に、勝訴判決をもって、強制執行の手続きにおいて執行官主導の元、退去を実行することになります。 途中、賃借人の任意で支払・退去した場合には手続き終了になります。 まとめ 賃貸経営における根幹となる家賃収入が入らないと言う問題はオーナーにとって非常に大きな問題ですが、 しかしながら自力救済の禁止などが定められている以上、あくまでも法的根拠に則る形で対処が必要となります。 家賃滞納は金額が大きくなればなるほど、機会損失が大きくなるので、そうならないためにも 予め専門家などに相談をする事も家賃滞納を防ぎ賃貸経営を成功させる一つだと思います。 著者: 司法書士法人中央グループ・行政書士法人中央グループ・社会保険労務士法人中央グループ 税理士中央グループ 代表 原田康伸 HP:http://www.h-firm.com/index.htmlreibee-japan-am-service日本AMサービス y.dst0403@gmail.comAdministratorReibee~次世代のための賃貸経営情報~
コメントを残す